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 内視鏡手術の現状と動向

 読売新聞西部本社は、現代医療や健康の問題を読者の皆さんとともに考えようとの狙いから、紙上掲載と連動した形で、医療ルネサンス・セミナーを定期に開催している。今回、同社と日本外科学会、九大臨床・腫瘍外科などが主催、日本医師会や福岡県医師会など多数の後援を得て、日本外科学会定期学術集会市民公開講座('09/04/05:アクロス福岡於)が、「最小の傷で治す内視鏡外科最前線」というテーマで開催された。
 九州大学の専門医ら6人が講演。将来、医師を目指す中学、高校生を交えたパネルディスカッションがあり、一般市民や、現在通院中の患者ら約700人が聴講。傷が小さく、生活復帰が早いなどで注目される内視鏡手術についての興味深い話題や、最先端技術、最新医療の動向に関して、読売新聞紙上に掲載された内容について、以下紹介しています。

('09/04/18付 読売新聞「発刊45周年記念第22回医療ルネサンス・セミナー」より)

最小の傷で治す内視鏡外科最前線

                             〜 未来の外科への挑戦 〜
【 装置、技術とも格段の進歩 】
 九州大学臨床・腫瘍外科の田中雅夫教授の基調講演から、国内初の内視鏡手術は、1990年の腹腔鏡下胆のう摘出手術。へその上からみぞおちまで傷が残る開腹手術と比べ、1〜1.5センチの傷で済むようになった。2年後に保険適用が始まり、今では大腸、胃、食道、膵臓、肝臓まで、実施件数は年々増えている。


 手術は、腹壁に開けた小さな穴から炭酸ガスを注入して行う。腹が膨らんで臓器が押し下がった際のすき間に鉗子(かんし)を入れ、カメラで写した映像を見ながら操作する。超音波で振動を与え、脂肪組織や血管の切断面を固めながら切る装置が普及したため、技術も格段に進歩している。傷が小さく、痛みが少ないので回復が早い。早く歩けて食事ができるようになるので、早期退院が可能で入院費も安くなる。医師の立場では、患部が拡大されて奥の方まで良く見える。
 一方、炭酸ガスが血管の破れた場所から入り込んで肺に詰まると、呼吸が出来なくなる。また、カメラに写っていない部分で鉗子を出し入れするので、思わぬ損傷を引き起こすこともあり得る。開腹手術よりも作業が難しいので手術時間は長い。早期がんは大抵の臓器で内視鏡が利用できるが、進行がんはリンパ節への転移の危険性があるので、実施するかを慎重に見極める必要がある。胃、大腸がんは内視鏡でできるが、膵臓がんはリンパ節患部を完全に除去することが難しい。内視鏡手術は、こうした問題点を理解した上で実施すれば非常に素晴らしい手術
だ。

内視鏡外科手術のメリットや病院の選び方

【 事前に自分で研究必要 】
 『腹腔鏡や胸を開く胸腔鏡を遣った手術は、がんの領域でも広がっており、胃がんや大腸がん、肺がん、乳がん、腎臓がんなどで増加傾向にある。
 内視鏡外科手術のメリットは、傷口が小さくて目立たないこと。回復が早く、社会復帰までの時間も短い。ただ、気をつけるべきことは、がんの進み具合によっては対応できなかったり、一部に保険が適用されなかったりすること。前立腺がんなど、腹腔鏡での手術が技術的に難しい例もあるため、従来の開腹手術などの説明も受けてほしい。治療を受ける病院をどう選ぶべきか。日本内視鏡外科学会が好評している技術認定医を確認するのもよい。読売新聞が企画した「病院の実力」に掲載した先生へのアンケートや医療機関の治療件数なども一定の参考になるのではないか。』と館林牧子さん(読売新聞、医療情報部記者)は話している。

遠隔手術にも期待

【 外科の革命 さらに進化 遠隔医療と情報発信 】
 『現在、九大が中心となり、2003年8月、高速インターネットで胃の内視鏡手術を初めて勧告に配信し、見学してもらった。さまざまな場所に配信でき、種々つばと同じ画像を見ることが出来るが利点だ。
 九大では現在、20か国・90施設に情報を発信し、2008年10月には、アジア遠隔地医療開発センターも完成した。福岡・九大からアジアや世界へ。活動は更に広がっている。内視鏡手術はこの20年間で外科の世界に革命を起こしたと言っても過言ではない。』と九州大学病院光学医療診療部 清水周次准教授は力説している。

胃がん

【 はやい段階なら負担軽い 】
   九州大学臨床・腫瘍外科の永井英司准教授は、『胃がんは、胃の内側を覆う粘膜から起こり、だんだん成長する。筋肉の層を越えると進行がんで、手前だと早期がん。粘膜だけの比較的早い段階なら、口から胃カメラをのんで切除できる。これが一番負担が少ない。リンパ腫に転移している恐れがあれば手術が必要になる。腹腔鏡手術は、胃カメラでは不十分と考えられる早期がんの一部が対象となる。開腹手術ではみぞおちからおなかを大きく開けるが、腹腔鏡なら術後の傷が小さい。全国的に増加傾向で九大では胃がん手術の90%が腹腔鏡手術だ。5年生存率は、ステージ兇泙任漏腹手術とほとんど変わらない。体に優しい技術も開発されてきているので、早期発見に努めてほしい。』と述べている。

大腸がん

【 身体機能温存可能 】
 九州大学臨床・腫瘍外科講師の植木 隆さんは、『日本でも近年、大腸がんの患者数が右肩上がりで増えている。多くの場合、手術はがんとリンパ節をすべて切り取る。直腸がんの手術でも、最近の技術の進歩で、かなりの割合で肛門を残すことができるようになった。もう一つ大切なことは機能の温存だ。直腸の手術で温存すべき神経は、ぼうこうや前立腺とつながっている。ここがやられると性機能や排尿に障害が起こるが、腹腔鏡手術では、神経をよく見ることができ、損傷も少なくなった。大腸がんでの腹腔鏡手術の割合は現在、80%を越えた。痛みが少なく、術後1週間ほどで退院もできる。私たちは患者から勇気や元気をもらって頑張っている。今後もトラブルのない手術をするために腕を磨きたい。』としている。

乳がん

【 負担減目的 内視鏡手術導入進む 】
 九州大学臨床・腫瘍外科助教授の久保 真さんは、『乳がん患者は20年前の約2倍に増えている。都会病とも言われ、九州では福岡県で死亡率が高い。以前は乳房だけでなく、胸の筋肉や脇、鎖骨下のリンパ節も取っていたが、最近では乳房の部分切除やセンチネルリンパ節生検が増えてきた。内視鏡を使う手術も徐々に増加傾向で、10年前には全国で22例だったが、患者の負担減を目的に導入が進み、現在は1000例に上る。手術では、脇の下と乳輪近くの皮膚をそれぞれ約2センチ切開し、内視鏡を挿入して2か所の小さな傷だけで患部を取り出す。乳がんの分野ではまだまだ新しい技術なので、どんな患者に向いているかなど、安全性を10〜20年かけて見極める必要がある。もっと進歩するため、更なる工夫を心がけたい。』と、現状と抱負を語っている。

内視鏡を使った手術はどの程度行われているか?

 ほとんどの大学病院や大きな病院ではできるが、膵臓腫瘍の切除手術は、まだ全国で九大、大分大、群馬大、阪大、日医大、東京慈恵医大の6か所でしか、国から先進医療として認められていない。総胆管嚢腫を行う施設は、まだそうない。九大では約30人弱に実施しているが、まだ保健医療としては認められていない。
   食道がんでは全国的に広がり、九大では全例に近いほどだ。胃がんは、早期がんではかなり広がり、進行がんでも増えてきている。九大では進行がんでも増えてきている。九大では進行がんも含め9割が内視鏡手術だ。
 大腸がんでも全国的にかなり普及していて、年間200例以上実施する施設もある。大腸がんには直腸がんと結腸がんがあり、直腸の方が手術は難しいが、九大ではどちらも8割5分くらいは内視鏡で行っている。
 乳腺は全国でやっと年間1000人だが、増加傾向にある。九大は年間40人くらい。ほかに九州でやっている施設はあまり聞かない。

内視鏡はどう難しいのか?

 道具が必要なので不自由。おなかに器具を刺す方向によって、動く方向が限られる。傷を少なくするために、4,5本をどこに刺すかが技量だ。それは経験で分かってくる。
 胃がんも大きな腫瘍を取る場合、視野の確保が難しい。早期の胃がんなら、最近は開腹手術より難しいとは感じないが、全く別の手術なので、当初は難しかった。
 直腸の場合は、骨盤内が狭いので機器すら届きにくい時もある。通常まず結腸の手術から始めるが、直腸の腹腔鏡手術にはかなりトレーニングが必要だ。
 乳腺の場合、手術に道具代が含まれていないため、最小限の器具で工夫してやっていかなければならない。
 普通の手術なら立体的に見えるが内視鏡の手術は画面を見ながらやるので平面にしか見えず、奥行きが分かりにくい。まず、それに慣れる必要がある。
 内視鏡手術をするなら、医師の経験を考えて選びたい。医師が少ない分、待ち時間が長い場合もある。危険性も考慮して判断する必要がある。

内視鏡の外科医を育てるのに、どの程度時間がかかるのか?

 開腹手術でも、自分が主体となって胃がんが切れるようになるまでに7〜8年はかかる。内視鏡はそれから更に2,3年かかる。高難度手術になると、もっと時間が必要だ。

患者の満足度は?

   乳房温存手術への期待は高いが、傷がついても、がんをしっかり治療してほしいという患者が多く、十分理解していただいている。ただ、皮膚を切開した傷がうまく治らないことはある。思い通りにならない傷を減らしたい。
 大腸の手術では、排尿・排便、性機能の問題が、生活の質に直結する。
 今、直腸がんの手術で排尿・排便、性機能をつかさどる神経を傷つけることは、開腹でも内視鏡でもほとんどなくなってきている。神経が残るぎりぎりできるには内視鏡が一番。開腹手術なら傷跡は約20センチだが内視鏡は3〜6センチだ。
 胃の全摘も、へその上から約3センチの切開でできる。脾臓を一緒にとる場合でも、3〜4センチで出来る。

皆さんが描く未来の外科はどんなものか?

   傷を全く作らずに手術ができれば最高だ。口やおしりから入れた内視鏡を使い、胃からおなかの中に出て行って胆のうを取ることは、実際には可能になっている。だが、一番の障害は保険診療として認められないことだ。
 小さな道具が体内に入り、遠隔操作で患部を取り除くか、消してしまうような治療ができればいい。
 最もいいのは、薬ができて傷をつけて治す外科がいらなくなること。外科医の大量失業時代が来るが(笑い)、それが一番だ。
 体外に腫瘍を出すには、最低その大きさの傷がいるので薬でなくす時代がくれば究極だ。今でも放射線で消したり、焼いたり、凍らせたりする治療が少しずつ入ってきているが、まだまだ問題がある。今はとにかく手術による傷を最小にしたい。
 内視鏡でも100人手術したら数人は合併症になる。機械や技術が進み、合併症がない手術ができるようになればいい。
 近未来は、医師不足の地方で、遠隔での手術ができるようになるかも知れない。それでも、医師同士や患者と医師のつながりは重要だ。
(出典:09/04/18付 読売新聞「発刊45周年記念第22回医療ルネサンス・セミナー」日本外科学会定期学術集会市民公開講座より)